「高血圧やコレステロール値の基準値がずいぶん甘くなったそうですね。」という声をしばしば聞くようになりました。これは4月に日本人間ドック学会が発表した「新たな検診の基準範囲」が従来の基準値を大幅に緩和した数値になっており、事情をきちんと把握していないマスコミが「基準値緩和」などと誤解を招く表現で報道したことが原因だと思われます。この新基準では血圧147/94が上限となっていて現場の混乱を招いています。
この調査は2011年に人間ドックを受けた150万人のうちから34万人の「健康人」を選び、その中の1万~1万5千人の血圧やコレスレロールを調べて新たな基準を発表したものです。つまりこれは「健康な人の検査値の分布範囲」を示したもので、将来の脳卒中や心筋梗塞を予防するための値ではありません。日本医学会、日本高血圧学会、日本動脈硬化学会は発病予防のために作成された従来の基準値に変更はないことを強調しています。
現在用いられている各学会の基準値は、ある地域の住民を長期にわたり科学的に追跡調査し、その結果から予防に必要な値を導き出したものです。今回の人間ドック学会の基準はその年のみの健康な人の統計を取って発表したものですので「健康な人の大まかな基準値」ととらえておく方がいいと思います。