コカイン中毒と社会

コカイン中毒と社会

コカインは中枢神経系を刺激して異常な興奮を引き起こす薬物です。脳内の神経伝達物質ドパミンやノルアドレナリンの活性が異常に高まり、頻脈、高血圧、散瞳、高体温といった交感神経興奮作用が引き起こされます。また血管収縮作用も強く、心筋梗塞、脳梗塞、大動脈解離、腎虚血、腸管虚血などで突然死する原因となります。

コカインを喫煙すると興奮と高揚により、多幸感、活力向上感、全能感、誇大感が引き起こされます。さらに過剰に投与されると攻撃性、不眠、幻覚、妄想、せん妄となり、その後強い疲労と消耗症候群により睡眠をむさぼるようになり、その繰り返しでさらなるアリ地獄にはまっていくことになります。アルパチーノファンの私はコカインというとすぐに「スカーフェイス」を思い出すのですが、あの結末も実に悲惨なものでした。

アメリカでは今、コカインは非常に大きな社会問題となっています。それは2015年から16年の間にコカイン中毒死が52%増加したからです。この異常な中毒死の増加の原因は、中毒患者がさらに強いドラッグを欲しがり、売人がコカインにフェンタニル(ヘロインの50倍強力なオピオイド)を混入させて売るようになったためといわれています。フェンタニルは医療現場でレスキュー用にのみ許可されている強力な合成オピオイドですが、この5,6年の間に違法麻薬市場に入りこみ、プリンスなどの有名人を含む多くの人の命を奪っているのです。

米国で薬物依存を調べている専門家は、ホームレスや黒人のコミュニティー、メキシコ系アメリカ人、プエルトリカンなどで特に汚染がひどく、毎月150万人はコカインを使用していて、その数は今やヘロインの3倍だということです。アメリカではコカインの値段が1g5000円以下に下がり、手短かに現実逃避、多幸感が得られる事から敷居の低いドラッグになっているようです。

また低産階級だけでなく、成功者と言われる人たちにもコカインは蔓延しています。「コカインは幻覚や快感が得られると言うがホントは違う。頭の回転が尋常じゃないほど速くなり、画期的なアイデアが浮かぶ。このお陰でシリコンバレーを生き抜き、ウォールストリートを勝ち抜くことができた」と彼らは言い、スティーブ・ジョブスは成功の理由はLSDだと言い切っています。アンジェリーナ・ジョリーやパリス・ヒルトン、オバマ元大統領もコカイン元愛用者。向こうに住んでいたら成宮君もピエール君も普通に仕事できてた、ってことでしょうか。麻薬ってホントに怖いものなのに、これほど民族間で認識が違う事が不思議でなりません。

関連記事

  1. 頭痛と生活習慣:スマホを使ったビッグデータ解析

    頭痛と生活習慣:スマホを使ったビッグデータ解析

  2. 中高年の理想的なダイエット

    中高年の理想的なダイエット

  3. めまい、ふらつきの多くは生活習慣病です

    めまい、ふらつきの多くは生活習慣病です

  4. 色々な症状に悩まされる低血圧症(2)

    色々な症状に悩まされる低血圧症(2)

  5. 山中教授iPS細胞が変える未来の医療

    山中教授iPS細胞が変える未来の医療

  6. 腋窩多汗症(ワキ汗)のボツリヌス療法

    腋窩多汗症(ワキ汗)のボツリヌス療法

ピックアップ記事

  1. 片頭痛にめまいが合併する「前庭性片頭痛」
  2. 高齢者の頭部打撲でおこる「慢性硬膜下血腫」について
頭痛関連記事
最近の記事 よく読まれている記事
  1. 新しい認知症治療薬「レケンビ(レカネマブ)」Q&A
  2. さまざまな失神
  3. 中高年の理想的なダイエット
  4. 持続性知覚性姿勢誘発性めまい
  5. 鎮痛剤の使い過ぎによる頭痛(頭痛外来でまずは正しい診断を)
  1. 子供の「ぶよぶよたんこぶ」と「固いたんこぶ」いつ治る?
  2. 子供(乳幼児)の頭部打撲:ぶよぶよたんこぶの対処法
  3. 子供が頭を打った(頭部打撲)時の確認手順
  4. 「運転したい」高齢者VS 「やめてほしい」家族
  5. スポーツ顔面外傷の注意点
PAGE TOP