去る8月18日、JR池袋駅近くで歩道に乗用車が乗り上げ、歩行者5人が死傷するという事故が起きました。運転していた53歳の男性にはてんかんの持病がありしかも医師であったことで注目を集めました。警察は危険運転致死傷の疑いで詳細を調べています。最近はこの様なてんかん関連の交通事故が増えており社会問題化しています。
クレーン車暴走事故(平成23年4月18日 栃木県鹿沼市)
午前7時45分ごろ、集団登校中だった生徒の列(20~30人)に10トンクレーン車が突っ込み民家を破壊して停止した。はねられた6人の生徒が死亡。26歳の運転手はてんかんの持病があり過去10年間に12回の事故を起こしていたにも関わらず、運転免許更新時に持病の申告をしておらず、服薬も怠っていた。宇都宮地裁では刑事で懲役7年の実刑判決、民事では1億2500万円の賠償を命じた。この事件の処罰があまりにも軽すぎるという遺族の声を受け、平成26年5月新たに「自動車の運転により人を死傷させる行為などの処罰」として「自動車運転死傷行為処罰法」が制定された。てんかんの持病を有する状態での事故を適応条件に入れている。
ワゴン車暴走事故(平成24年4月12日 京都 祇園)
30歳男性の運転するワゴン車が祇園の繁華街を暴走し運転者本人を含む8人が死亡、11人が重軽傷を負った。運転手は以前バイク事故を起こした際に脳挫傷をきたし、その後遺症でてんかんの持病を持っていた。24年になって二度の意識消失発作を起こしており家族からも運転しないように注意されていた。京都地裁は、刑事処理では容疑者死亡のため不起訴、民事では運転者の家族と勤務先会社に損失利益2100万円、慰謝料2700万円を遺族に支払うよう命じた。
てんかんを扱っている医療施設では医師の責任という観点からもより慎重な対応が求められています。症状や脳波検査でてんかんの診断がついたら指導通りに服薬されているかをきちんとチェックし、抗てんかん剤の血中濃度を定期的に検査する事が大切です。免許更新時には必ず申告し、過労や睡眠不足で運転しないように注意を促しています。池袋の事故後の8月25日、日本てんかん学会は適切な指導を促す文書を医師向けに発表しました。このような注意を払い、医師と患者さんが双方から情報を提供しながら事故を防いでゆきたいものです。
- 過労や病気、薬物の影響で「正常な運転ができない恐れがある状態」では運転しないよう道路交通法で定められていることを説明する。
- てんかん患者の運転適性は発作状況や医師の判断で個別に定められているので、医師の指導が受け入れられない場合は、医師から公安委員会に届け出がなされることを説明する。
- 免許取得時、更新時に必ず病気を申告するよう指導する。
- 運転可能な状態でも薬の飲み忘れや睡眠不足、疲労蓄積、発熱などてんかんが起こりやすい状態の時は運転しないように指導する。