コロナ禍の真っ只中ですが学校は再開されました。小学校の新1年生たちにとってはこの不便な生活様式が当たり前の学校生活となっていくのでしょうか。大変な時代です。新大学生たちはリモート講義で実家にいたまま東京の大学の講義を受けています。新しい友人との交流もサークル活動もなく、なんと無味乾燥なつまらない学生生活でしょうか。本当に気の毒です。
こどもたちが幼稚園や学校に戻り、頭を打って脳外科を受診する機会も増えてきました。こどもたちは自分の受傷の様子や症状をうまく説明できませんので問診や触診、神経学的な診察が重要になります。けれども頭蓋内の様子はやはりCT検査に頼らなければわからないこともあり、その検査を行うかどうかは、担当医の判断や家族との相談で決めることになります。
CT装置の進歩によりCTによる放射線被ばく量は非常に減少してきました。短期間に検査を繰り返さない限り影響はないと思いますが、それでも被ばくする事は確かです。ですから検査は、そのメリットがデメリットを上回ると考えられる際に行うべきです。
6歳以下の頭部打撲のCT検査の条件
最近、小児科学会など関連学会のガイドラインが作られていますので、当院ではおおむねそれに沿った条件で検査を行っています。
1. GCS14点以下のケース
GCSとは「グラスゴーコーマスケール」という意識レベルを判定する目安で、救急医療でよく使われています。これは15点満点ですので、14点というのは、軽い意識障害があることを示しています。たとえば、声をかけないと目を開けない、会話がきちんとできない、指示通りに手足を動かすことができない等の状態です。このようなときは頭蓋内に血腫ができている可能性もありますのでCT検査を行います
2. 頭蓋骨骨折が疑われるとき
頭蓋骨骨折の有無を触診で判断することはできませんが、たんこぶ(皮下血腫)が大きい時は心配です。腕や足の場合と同様に骨折の際は痛みや腫れがかなり強くなりますのでその所見が参考になります。また、傷が深く、縫合処置が必要だったケースでは衝撃が強かったと考えられますのでCT検査を撮ることにしています。
3. いつもと様子が違うとき
打撲の後、お子さんは強い疲れを感じて寝てしまうことが多いのですが、すやすやと眠っている時は心配ありません。 呼吸が荒い、顔色が悪い、興奮状態になっている、ひきつけを起こしているなどいつもと明らかに状態が違う時は検査が必要です。
4. 受診後に症状が悪化した場合
受診時に異常がない事を確認したにも関わらず、帰宅してから様子が変わるという事態はめったにあることではありません。でももしそのようなことが起こればすぐに病院に連絡をして検査を受けることが必要です
5. 家族の希望がある場合
厳密には医学的にCT検査が必要なくてもご家族が希望されることはよくあります。自分はしなくてもいいと思うけれども、検査せずに帰ったらご主人から叱られるというお母さん、不要とは思うけれども学校で起こったケガだから責任問題になるという保健の先生など社会的な理由で検査が必要なケースはたくさんあります。このようなケースでは何といっても安心していただくことが大事ですから検査を行うことになります。保険診療上においても、「家族の希望」というコメントを付記すれば検査を行って良い事になっています。