脳と泌尿器の連携プレー
中高年の排尿のトラブルで多いのは、夜間頻尿、昼間頻尿、過活動膀胱などですが、実際に病院を受診しているのは約20%以下といわれています。尿を作り体外に排泄するのは、腎臓、尿管、膀胱、尿道の役割です。人間は適切な時間と場所で排尿できるように調節機構を持っています。脳と泌尿器の緻密な連携プレーです。尿がある程度膀胱にたまってくると「たまってるよ」という情報が脳に伝わりますが、脳の司令塔からは「マダマダガマンセヨ」という命令が送られます。その指令が骨盤底筋や尿道括約筋に伝わって、尿道を締め、尿を漏らさないようにするのです。トイレに行き準備が整い、脳に「そろそろ出したいんですが」とお伺いを立てると、脳は「オッケー。出していいよ」と指令を送り、膀胱が収縮し尿道が開いて排尿する。と、このようなしくみです。
加齢で増える尿トラブル
男性の尿トラブルの最大の原因は前立腺肥大症です。前立腺の中を尿道が通っているので肥大すると尿が出にくくなり、残尿が増え、頻尿や排尿困難につながります。また膀胱が刺激されて過活動膀胱にもなりやすくなります。
男女共に多い過活動膀胱の症状は主に二つです。必須症状は突然の尿意に襲われて我慢できなくなる尿意切迫感や切迫性尿失禁で、さらに一日8回以上の昼間頻尿や、2回以上の夜間頻尿を伴っていると完全に診断できます。これは加齢によって膀胱と尿道の連携がうまくいかなくなっていることが原因といわれており、切迫性尿失禁がある方はかなり進行しているといえるでしょう。
女性では過活動膀胱の他に、尿漏れで悩んでいる方が多いと思います。中でも多いのが腹圧性尿失禁です。せきやくしゃみ、トイレでいきむ、大笑いする、重いものを持ち上げるなど、下腹部に力を入れた時に尿漏れが起こります。肥満気味で2回以上の経腟分娩の経験がある人に多いとされています。加齢で尿道括約筋の機能が落ちる事が主因ですが、妊娠、出産で骨盤底筋が緩んでいることも原因になります。
男性の尿漏れで多いのは排尿後の尿漏れです。専門的には排尿後尿滴下と呼ばれます。これは尿道の一部に尿が残っていて、それが後から漏れ出てくるのです。原因は尿道を締める筋肉の衰えと排尿時の勢いの低下や切れの悪さです。前立腺肥大による尿勢低下も尿漏れに影響していることになります。
次回は頻尿のメカニズムや対策について述べたいと思います。