発達障害の脳科学2(脳内で起こっている事)

発達障害の脳科学2(脳内で起こっている事)

シナプスの「刈込み現象」の不調

発達障害の症状は部分的にみると自分にも当てはまっているなと思う方も多いと思います。発達障害は普通の人が持っている特性の一部が濃く出過ぎてしまい、適応できなくなっている状態とも考えられます。
脳は生まれてから成熟するのに20年かかる臓器です。その中でも乳幼児期の発達には目覚ましいものがあり、特に3.4歳までは外界からの刺激によりシナプスの数が劇的に増えてゆく時期です。神経回路が劇的に増えていく過程で、「何度も繰り返される刺激」に反応するシナプスが強固になる一方でそれ以外のシナプスが取り除かれていき、脳のネットワークは適切な形に整理されていきます。この「シナプスの刈込み」という現象が不十分だと過剰な神経回路が残ってしまい、それが発達障害の大きな要因となるのです。この現象がマイナスに働くと生活がしにくい障害となり、プラスに働くと芸術家や起業家として大成することになります。

ASD(自閉症スペクトラム障害)の情報処理

ASDの人は「部分的な情報だけを処理しがちで、種々の要素が組み合わさった全体的な処理能力が苦手」とされています。私たちは無意識に複数の部分的な情報に優先順位をつけて処理して、全体的に意味のあるものにしようとしています。これを「中枢的統合」と呼んでいます。ASDの人は中枢性統合が弱いので、例えば小さなAという文字を集めてHという文字を描いた場合それを「A」と認識したり、錯視の絵で、周囲の図柄によって大きさが違うように見せる左右の円を見せてもASDの人には錯視がおこらず、同じ大きさだと正しく言い当てることができます。この「中枢性統合」の弱さは「注意を司る前頭葉機能の不具合」「前頭葉と視覚中枢との結合の脆弱さ」などが原因と言われており、これもシナプスが増える過程で起こった不具合と考えられます。

ASDの感覚過敏

たとえば私たちは授業中に先生の声しか聞こえない空間にいるわけではありません。室内のがさがさ音、室外の声や車の音、いろいろな音が耳にはいりながらも先生の話に集中しているのです。ASDの人はそれができません。不要な情報を意識にのぼらない様に抑制するという脳の機能が弱いので、普通の人には気にならない程度の小さな音が耐えきれないほど苦痛で、両手で耳を塞いでしまいます。光も蛍光灯やパソコン、縦模様などのコントラスの強いものが特に苦手です。また、下着の肌触りやタグに敏感だったり、友達とふざけて遊ぶ時に、体に触れられるのが非常に不快で拒否反応を起こします。
一方で「感覚鈍麻」も特徴的です。空腹を感じにくい、寒さ、暑さを感じにくい(1年中同じような洋服をきている)ケガをしてもあまり訴えないなどの症状です。これは感覚過敏とは真逆のようにみえますが、どちらも「外界の刺激に対する反応が偏っている」ことが原因と捉えることができます。

次回はASDのコミュニケーション障害の仕組みについて紹介したいと思います。

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