ご家族から「同じことを何度もいうのですが、受診させた方がいいでしょうか」、「まだ大丈夫とは思うんですが最近少しおかしいんです」「どの時点で受診させるべきですか」といったお電話を頂くことがあります。認知症の定義はあくまで「日常生活に支障が出ていること」とされていますが、ひとことで日常生活と言っても人によって様々ですのであまり親切な定義とはいえません。愛知県認知症センターの川畑信也先生のテキストを参考にしてその考え方をご紹介いたします。心配しているご家族はどのレベルでしょうか。
1. 物忘れのレベルで早期診断する方法
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しまいわすれや置き忘れが多い
正常な人でもしばしば見られる。心配なし。
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同じことを何度も言うようになった
正常な人でもみられるかも??ちょっと心配?
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約束事や以前に言ったことを忘れてしまっている
認知症かもしれない。頻繁なら要注意。
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前日の会話や出来事を忘れることがしばしばある
認知症の可能性が高い
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ついさっき言った事や少し前の電話の内容を忘れている
認知症の可能性がさらに高まる
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直前のことも忘れてしまう
認知症
2. 性格変化や行動で進行度を推測する方法
初期の認知症
- 怒りやすくなったり気が短くなったりする(易怒性)
- 興味ややる気がなくなりぼーっと過ごすことが増えた(意欲低下)
少し進んだ認知症
- 妄想が増える(物盗られ妄想、被害妄想)
- 不安が強くなる
中等度の認知症
- 興奮しやすい(易興奮性)
- 介護を拒絶する(抵抗)
- うろうろと歩くきまわる(徘徊)
- 自分の家ではないと言って帰宅しようとする(帰宅願望)
- 夕暮れ症候群(夕暮れ時にいらいらや不安が強まる)
- 昼夜逆転が起こる
重症の認知症
- あるはずのないものが見える(幻覚)
- 家族を認識できない
- 変な物を食べる(異食)
- 異常行動(裸になる、汚物をタンスにしまうなど)
- 不潔行為(便を手で触る)
3. 「3つのアルツハイマー型認知症らしさ」から推測する方法
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とりつくろい反応
質問に答えられない時に、言い訳や弁解などでとりつくろいながらなんとかその場を切り抜けようとする。自分がやりたくないことや答えられないことはほとんど言い訳で逃れる。言い訳は多彩で認知症とは思えないほど巧妙。日にちを答えられないに時に「もともと私は日にちには興味がありません」などと答える。比較的早期から現われることがある。
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考え無精(考えようとしない)
質問に対してしっかり考えようとせず、すぐに「あ、わかりません」「知りません」「忘れました」と答える。他の種類の認知症に比べてあっけらかんとした印象で、答えられないことに対する落胆はない。
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振りかえり現象
医師の質問に対していちいち後ろの家族を振り返って、家族に答えさせようとする。自分で考えましょうと促しても、やはり後ろを振り向いて援助を求め、答えさせようとする。アルツハイマー型認知症で非常に特徴的。