何となく当たり前だと思っている事でも、学問的に裏付けられるとなるほどと納得してしまうことがあります。インフルエンザが何故蔓延するのか。という命題です。
飛沫感染
インフルエンザの感染経路の第一は飛沫感染。インフルエンザ患者の咳やくしゃみで飛び散ったウイルスを含むしぶきを吸いこんで感染する経路です。咳1回で10万個のウイルスが2メートル、くしゃみ1回で4,5メートル飛散するといわれています。咳やくしゃみをする時は他の人から顔をそむけ、2メートル以上離れるように気をつけます。咳やくしゃみをした時に顔を押さえた手をすぐに洗う事、周囲の物に触れない事など周囲環境の汚染を減らす工夫が大切です。
接触感染
ウイルスが付着した物を触れることで感染します。感染者が触れた手すり、ドアノブ、椅子、タオル、コップなどに触れてしまい、無意識にその手を自分の口や鼻に持って行く行為で感染します。公共物や感染の可能性がある家族の物を触れた時、手洗いはもちろんですがまずはその手を顔の周辺に持っていかないように気をつけます。
空気感染
同じ空間、同じ部屋にいるだけで感染する空気感染。この空気感染が予想外に起こりやすい事が確かめられたという新しい研究報告です。米国メリーランド大学ではインフルエンザ患者142人の呼気を、①いつも通り呼吸している時、②話している時、③咳をした時、④くしゃみをした時に分けて採取し、その中のウイルス量を分析しています。この研究によると①のいつも通り呼吸をしている時の呼気の48%からインフルエンザウイルスが検出され、その中の7割以上に感染能力のあるウイルスが確認されました。しかもこの結果はくしゃみをした時の呼気と差がなかったというのです。
感染の蔓延を防ぐために
インフルエンザウイルスは咳やくしゃみをしなくても「ただ呼吸をしているだけで」周囲の空気中に飛散し浮遊している。改めてその感染経路の重要性が確かめられた研究結果です。インフルエンザに罹患した人が職場や学校に現われた場合は、くしゃみや咳をしていなくてもすぐに帰宅させるべきです。咳をしている人に近づかない、手洗いを励行するという方法だけでは感染から身を守ることはできないのです。
(参考文献)Proc Natl Acad Sci U.S.A 2018 Jan 30:115