思い出そう生活のリズム
最近やる気が起きず気分が憂鬱になっているので心療内科を受診したら「コロナうつ」と診断されました、という患者さんのお話を聞くことがあります。「コロナうつ」という正式病名はなく、まだ広くコンセンサスが得られているわけではありませんが、「そう診断されると確かに思い当たる節があり、納得できました。」という声が聞かれます。
具体的に何が問題?
コロナパンデミックは人々の普通の生活のリズムを奪いました。基本的な衣食住、そして仕事、学校、人間関係の全てに初めての体験を強いられています。中でも自宅に長くいなければいけない遠隔授業や在宅勤務、娯楽やリクレーションの中止などが大きなストレスになっていることは間違いありません。私たちは通勤や通学、会議や出張、仲間とのサークル活動、会社帰りの一杯など普通の生活のリズムに合わせて生きてきました。けれども今一気に崩れたその生活リズムに適応できず、心身に変調をきたし、抑うつを発症した状態が「コロナうつ」と呼ばれる病態です。
オンとオフが曖昧で気分や意欲が低下する
憂鬱な感じ、なぜか気分が落ち込む、イライラする、考えがまとまらない、集中力がなくなるなど、うつ状態の症状は様々です。「コロナうつ」では中でも気分や意欲の低下が目立つといわれています。ステイホームで家にいることが増え、リズムが変わり、他人と接触することも減り、オンとオフの区別が曖昧になり、身なりにかまわなくなる、興味がなくなる、外出がおっくうになる、やる気が出ないなどの症状が連鎖してみられてきます。この一連の心理変化を早く察して、なるべく早く対策を講じる事が大切です。
コロナ禍でのストレス対処法
ストレス対処法の三つのRとは「Rest(レスト 休息)」、「Relaxation(リラクゼーション)」、「Recreation(リクレーション)」のことです。これらはそれぞれ単独に行えるものではなくて関連しています。Rest(休息)の最も大切な要素はもちろん睡眠です。人の脳は朝起きて太陽光線を浴びた時から16時間後に眠くなるようにプログラミングされています。けれども生活のリズムが変わるとこの日内リズムが崩れ、不眠症になり十分な休息がとれません。①毎日同じ時間に起きて太陽光線を浴びる、②食事の時間を変えない、③日中、カーテンを閉め切った部屋で過ごさす明るい環境で過ごす、④昼寝をだらだらせず、20分程度に抑える、⑤睡眠前1時間はパソコン、スマホを見ない。そのような工夫が必要です。
Relaxation(リラックス)やRecreation(リクレーション)の方法は個人個人でかなり嗜好が違うかもしれません。良い睡眠や良いリラックスができないとリクレーションを行う気力も湧かないでしょう。運動や音楽、人によっては絵画や囲碁、将棋、俳句など時間がたつのも忘れるほど好きなものがあるかもしれません。生活のリズムを整え、良い睡眠をとり、生き生きとした生活や心の余裕を少しずつ取り戻してゆき、「コロナうつ」を克服したいものです。