平成27年6月に改正された新しい道路交通法は「75歳以上の運転者が免許更新時の認知機能検査で『認知症の疑いあり』と判定された場合は、必ず医師の診断書の提出が必要である」というものです。これは平成29年3月から実施されることになっています。
この改正に関する基本的な事を御説明します。
免許更新時の認知機能検査結果は3段階
「第一分類」:記憶力、判断力が低くなっている。「認知症の疑いあり」。
現行法 | 特定の交通違反(信号無視、高速道路逆走、踏切進入など)があれば臨時適性検査を行って、医師の診断書の提出が必要である |
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改正後 | 交通違反の有無に関わらず認知機能検査を行い、必ず医師診断書の提出が必要 |
「第二分類」:記憶力、判断力が少し低くなっている
「第三分類」:記憶力、判断力に心配がない
現行法 | 次回更新まで臨時適性検査や診断書は不要。 |
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改正後 | 特定の交通違反(詳細不明)があれば臨時認知機能検査を受検、診断書の提出が必要 |
以上の様に改正されます。
詳細について今はまだ明らかでない事が多いので徐々に明らかになると思います。警察庁は「第一分類」と判定された方全員を認知症センターに受診させたい意向ですが、現実にはそれでは医師の絶対数が足りませんので、まずはかかりつけ医に相談して、そこで解決できない場合は地域の認知症相談医やサポート医を紹介してもらうと良いかと思います。
日本認知症学会、日本老年精神医学会の専門医、日本神経学会、日本精神神経学会、日本老年医学会の専門医などが主としてこの診断に携わることになりますが、どこまでの医師が診断書を作成できるようになるかはまだ決まっていません。
福岡市南区認知症治療ネットワークのとりくみ
福岡市では福岡市方式と言われる認知症ネットワークを構築していますが人口150万人の規模で認知症対策を行うのは不可能です。そこで私たち福岡市南区医師会では認知症に関心を持ち認知症を積極的に診ている医師を登録し、講演会、症例検討会、他業種交流勉強会を開いてスキルアップをする独自の会を運営しています。
これが南区医師会認知症診療ネットワークです。特に福岡市南区には運転免許試験場がありますので、今後も公安委員会と密な連携をとりながら認知症と運転の問題について考えてゆきたいと思います。
運転に自信を持っている軽度認知症の方から自動車のキーを取り上げるのは大変難しいことです。法律では直ちに免許返納する事になっていますが、現実にはなかなかそう簡単にはいかないものです。頻度や走行距離を減らしたりしながら、徐々に車のない生活に本人も家族もが慣れて行かなければいけません。車がなくては生活できない環境の人のために、これからは行政の役割も大きくなっていくでしょう。
自己申請による運転免許証の取り消し方法や免許返納によって受けられるサービスにつきましては、このホームページ内の「運転したい高齢者VSやめさせたい家族」(リビング福岡掲載記事)を御参照ください。