New normalと呼ばれるコロナ時代の生活様式は本当に慣れないことばかりです。友達と会えない、ストレスを発散できないというこの状況に適応できず、明るい気分になれない、意欲がわかないなど精神的な問題を抱えている人が増えています。大声を出せない小学生、部活のできない中高生、遠隔授業に飽き飽きしている大学生、テレワークに戸惑う大人まで、どんな年代でも気分がすぐれなくなる条件は山のようにそろっています。こんな日常の中で「私、コロナうつ病じゃないでしょうか」と受診される方が時々おられます。久留米大学精神科の内村直尚先生の著書などを参考に考えてみたいと思います。
「うつ病」ははっきりした病気ですが、「うつ状態」は日常でもよくある気分の落ち込みです。夫婦喧嘩で妻に強く言いすぎてしまった、仕事で大きなミスをして信用を失った、どうしても勝ちたかった試合に負けてしまった、どれも落ち込んでしまいますが時間が解決してくれます。時間がたてば必ず回復していきます。けれども「うつ病」はそうはいきません。「うつ病」は気分を明るくして安定させる脳内の神経伝達物質が減少して起こっている病気ですので、薬物治療が必要です。
ではその落ち込みが「うつ状態」なのか、病的な「うつ病」なのかはどのように見分けるのでしょうか。
まず、正常な落ち込みでは仕事や家事などの自分の役割を果たすことができます。落ちこんでいるので少しは効率が落ちるでしょう。でも生活の流れが変わることはありません。何もしていないときに落ち込むことが多く、仕事ができなくなることはありません。
しかし「うつ病」では仕事ができなくなります。仕事をしようとしても思考する力が低下して思うようになりません。主婦は家事などいつも自然にやっていることができなくなります。
また、「うつ病」では趣味や物事への関心が薄れます。好きだったゴルフや料理や集まり事にも行けなくなります。パチンコやカラオケにも行けなくなります。パチンコ好きな人は、ギャンブルに勝つという根拠のない楽観的な妄想に囚われているのですが、「うつ病」の人にはそんな(前向きな)エネルギーや発想は沸いてきません。「上司が自分の能力を全然評価してくれなくてうつ病になってしまいました。あんな部署では仕事のやる気が出ないのでカラオケで発散しています」という人は、もちろん「うつ病」ではありません。
このようにうつ的な気分とうつ病の違いは自分の役割が果たせるか、好きなことを楽しむことができるかという事になります。もし、そのような状態が2週間以上続いて病的なうつ病が疑われたら、かかりつけ医に相談してください。かかりつけ医は、うつ病に随伴しやすい睡眠障害、易疲労感、食欲低下などの身体症状の有無を調べ、専門医への受診を考えることになります。