発達障害の脳科学 その1(特徴と分類)

発達障害の脳科学 その1(特徴と分類)

私が子供だった昭和の時代にも「発達障害」はあったのだろうかと時々考えます。それはもちろんあったのでしょう。学校で生きづらそうにしていた友達、毎朝迎えに行っても出てこなかった友達、授業を邪魔していた同級生。彼らの居場所はどこにもなかったのだと今さらのように思い返します。今はその存在が科学的に証明されただけでなく、さらには「発達障害」とぎりぎり診断されないグレーゾーンの子供たちの問題もクローズアップされています。この病気は一体何なのか。私はこの病気のエキスパートではありませんが、厚労省のウェブサイトや科学書、専門書等を参考にしながら改めて勉強したいと思います。

発達障害とは

「発達障害」とは脳の神経ネットワークの発達が通常と異なることで、発育や生活に支障が出る生まれつきの特性で。2,3歳以降に目立ち始め、集団生活が始まる5,6歳以降にはっきりしてきます。東大病院発達診療科の蟹江絢子先生は「発達障害は大人になってわかる事はありますが、大人になってから発症することはありません」と述べています。
「発達障害」には「自閉症スペクトラム(ASD)」、「注意欠如多動症(ADHD)」、「学習障害(LD)」の3種類があります。その中の2者の特徴を併せ持つ症例も多くあります。

自閉症スペクトラム(ASD)

これはかつての自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー症候群がまとめられたものです。乳幼児期から視線が合わない、他者への関心がない、こだわりが異常に強いなどの症状で疑われることが多いグループです。

注意欠如多動症(ADHD)

不注意、多動性、衝動性を主な特徴とする群です。集中できない、気が散りやすく順序だてて計画できない、じっとしていられない(座って授業や診察を受けることが苦手)、待つことが苦手という特性のために、家庭、学校、大人では職場で対人関係に問題が生じます。最も生きづらさを感じている人たちかもしれません。

学習障害(LD)

知能の遅れがみられないにも関わらず、読む、書く、聞く、話す、推論するなどの行為に対して何らかの障害を呈します。これは個体差が大きく、流暢に文章を読めないディスクレシア(読字障害)、ひらがなや漢字を正確に書けないディスグラフィア(書字障害)、計算ができないディスカリキュリア(算数障害)に分類されます。俳優のトム・クルーズさんはディスクレシアであることを公表しています。これらの障害は血液検査や画像診断でわかるものではありませんので、その人それぞれの特性に合わせた治療や対策を専門医が行っています。

「発達障害」の原因は遺伝的要因と環境要因がありますが、双生児の研究から遺伝的要因が大きいと結論されていま。ASDやADHDでは多くの原因遺伝子が見つかっていて、単独遺伝子の変異で発症しているわけではなく、複数の遺伝子変異、染色体の微細な異常などが複雑に関与していると考えられています。では脳の中で実際にどんなことが起こっているのか、これから数回の連載でさらに掘り下げて考えます。

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