片頭痛は拍動性の激しい頭痛発作を繰り返す病気です。病気自体は体質的なものですが、ストレス、疲労、気候、ホルモンなどで誘発され、光や音に過敏になり、吐き気を伴い、日常生活に多大な影響を及ぼします。
頻度は数か月に一度から数日に一度まで人によって様々ですが、痛みが非常に強いため、生活の質が極端に落ちてしまいます。特効薬トリプタン製剤のおかげで片頭痛で苦しむ人は減ってはきましたが、専門の病院にかかっていなかったり、正確に診断されなかったりとまだまだ困っている人はたくさんいるのが現状です。
新しい片頭痛予防薬
片頭痛が繰り返して起こり生活に大きな支障がでている場合、まずは予防薬を内服することになります。日本で主に使われている予防薬はバルプロ酸(抗てんかん薬)、アミトリプチリン(抗うつ薬)、プロプラノロール(降圧剤、狭心症治療剤)の3種です。これらの薬の有効性は証明されていますが、慢性片頭痛や反復性片頭痛といわれるタイプでは頭痛発作の頻度が非常に高く、内服の予防薬では手に負えなくなってきます。そのようなケースで使える新しい予防薬が「エムガルティ」です。お笑いコンビ、オードリーのツッコミ担当若林正恭さんがその有効性をラジオ番組でしゃべったことが引き金となった(?)かどうかはわかりませんが、若い方たちからの問い合わせが増えています。
エムガルティの有効性
片頭痛の起こるメカニズムは「三叉神経血管説」と呼ばれています。何らかの刺激によって、三叉神経からCGRPという物質が分泌され、それが血管を拡張させたり炎症を引き起こし、それが脳に伝わって頭痛を起こすという考えです。エムガルティはこのCGRPをブロックする全く新しい機序の片頭痛治療薬です。
反復性片頭痛患者に対する有効性は、下表のように薬を使わなかった群(プラセボ群)と比べて、一ケ月あたりの片頭痛日数が大きく改善されているのがわかります。
エムガルティの使い方
エムガルティは毎月1回の皮下注射製剤です。片頭痛の回数が多く、内服予防薬の効果が不十分な場合に使うことができます。初回は2本、その後は1本ずつ使用し、まず3か月でその効果を判定します。これはあくまで予防薬ですので、片頭痛がおこれば従来通り、トリプタン製剤を内服します。この薬を使うことができるのは日本脳神経外科学会専門医、日本神経学会専門医、日本頭痛学会専門医、日本内科学会総合専門医のいずれかと規定されています。頭痛外来を行っている医師ならば必ずその資格を持っていますので、繰り返す片頭痛に悩まされている方は相談していただければと思います。