脳梗塞が起こって数時間以内の治療を超急性期治療と呼びます。脳の神経細胞は血流の低下に大変弱いので、血流が途絶えた領域の中心部の脳細胞は数分以内に死滅してしまいます。けれどもその部分の周囲には「一時的に機能が停止するけれどもまだ神経細胞が死んでいない領域」が存在するのです。そこを生き返らせるのが超急性期治療です。その代表的な最先端治療を二つ紹介しましょう。
1.rt-PA静脈注射療法
これはrt-PA(組織プラスミノーゲン活性化因子)という薬物を静脈注射して血栓を溶解する治療法です。2012年8月からは発症4時間半以内の脳梗塞にこの治療が行えるようになりました。
脳梗塞の急性期症状は急に片方の手足に力が入らなくなる、急に顔の半分が麻痺する、急に言葉がしゃべれなくなるなどですが、その様な症状が出た時にいかに早くこの治療の設備が整った基幹病院を受診できるかがポイントになります。病院到着後、色々な検査で時間が費やされますのでまさに時間との戦いです。閉塞部位を確認するためのMRIやCT検査、血液検査、心電図、既往歴や内服薬のチェック等全身状態を調べ、この治療を安全に行うことができる症例かどうかが検討されます。ですから実際には2,3時間以内に受診できるかどうかがカギになるのです。
この治療がうまくいくと手足の麻痺が回復する、失われた言葉が戻ってくるなど劇的な結果が得られ大きな恩恵をもたらします。しかし脳内出血などの後遺症もゼロではありませんし、内頸動脈、脳底動脈、中大脳動脈近位部などの太い主幹動脈の閉塞では有効性が低いことが分かっており、全ての症例に効果があるとはいえないのが実情です。