認知症を発症しやすくする最大の要因はもちろん老化です。2012年の統計では65歳以上の高齢者のうち認知症の有病率は約18%となっています。当然のことながら長生きするほどその確率は高まります。ではそれ以外の原因は何でしょうか。近年、ライフスタイルと認知症には密接な関係があることがわかっており、認知症は新しい生活習慣病とさえ言われるようになっています。福岡県久山町では長年にわたり国際的に有名な精度の高い疫学研究が行なわれてきました。久山町研究を含めた最新のデータを九州大学大学院清原氏他の論文から御紹介します。
1.喫煙
- 生涯にわたって喫煙しなかった高齢者に比べ、中年期から老年期にかけて喫煙を続けた高齢者では、アルツハイマー型認知症、血管性認知症の発症率は約3倍高まります。
- けれども、高齢になってから禁煙を実行したグループでは発症リスクが減少し、非喫煙者と差がなくなります。つまり高齢になってからでも禁煙は遅くないというわけです。
2.アルコール
- アメリカワシントン州の大規模研究では少量から中等量の毎日のアルコール摂取は認知症の発症を30%減らすと報告されています。多量になるとそのメリットはなくなり、逆に危険性が高まります。
- 日本人でアルコール摂取量と認知症の関係をみた大規模な研究はないので、発症率を低下させるアルコール量がどの程度の量なのかははっきりしていません。
- ビールを1500cc以上(日本酒だと3合以上)毎日飲む多量飲酒者は認知症の発症が早まり、60代で脳の委縮が目立つようになり、認知症の初期段階に入ることが多いことがわかっています。
- アルコール多飲者は肝機能障害による認知機能低下も加わるため、「アルコール関連認知症」と呼ばれており、若年性認知症の重要な原因となります。
3.運動
- 1995年久山町研究は世界で初めて、仕事中の運動量や余暇時の運度量が多い高齢者ではアルツハイマー型認知症の発症率が低い事を発表しました。
- その後海外の多くの研究者も同じような結果を発表しています。週に3日以上、30分以上の運動が認知症発症を抑制するという報告など、運動の認知症予防効果は確実のようです。
4.食事
- 海外の研究では地中海式食事法がアルツハイマー型認知症の発症を抑制すると発表されています。地中海式食事法とはオリーブオイル、穀物、野菜、果物、ナッツ、豆類、魚、鶏肉を中心とした食事を少量のワインと共に食べる食事のことです。トマト、玉ねぎ、ニンニクに含まれる種々の物質が脳細胞をダメージから守るとされています。
- 久山町研究では、緑黄色野菜、海藻類、大豆製品、牛乳、乳製品を多く摂っているグループの発症率が低い事が示されました。主食の米を取り過ぎず、野菜豊富な日本食を食べ、さらに牛乳、乳製品を加えたメニューが認知症予防に有効と結論されています。