「夜明けの直前が一番暗い」というイギリスの諺があります。7月から真夏の日本を襲っている新型コロナの最大感染期第5波は果たしてその直前の時期なのでしょうか。それは誰にもわかりません。では2030年に新型コロナはどうなっているのか。それはもっとわからない話です。そもそも10年もたてば「新型」ではないような・・。最近、専門家がその予測を専門誌に発表するようになってきました。飲食、交通、観光、サービス業とあらゆる産業が衰退し、明日の事もわからないというのにそんな先の事なんて。とつい思ってしまいますが、人類の感染症との闘いを紐解くと、やはり年単位で考える必要がありそうです。インフルエンザはもちろんのこと、コレラ、麻疹(はしか)、結核、エボラ出血熱などほとんどの感染症は完全終息していません。感染症と共に生きる「社会的終息」をしているに過ぎないのです。
2030年の新型コロナ、考えられるシナリオはこの三つです。
シナリオ1 | 現在と同じく新型コロナは猛威を振るい、世界各国を震撼させている。都市ではロックダウンと解除が交互に繰り返されている。ウイルスの新しい変異株が次々と生まれ、それまでにワクチンなどで獲得した免疫が全く効果を発揮していない。 |
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シナリオ2 | 新型コロナは風邪症状を引き起こすウイルスとして社会に定着するが重症化することはほとんどなく、人々はコロナと共に生きている。 |
シナリオ3 | 新型コロナウイルスは完全に撲滅されている。 |
多くの予測によると、シナリオ2。
「社会的終息」をしているだろうという見方が強いようです。第一の根拠は、ワクチンによって体内に誘導された中和抗体は、変異株に対しても効果の多少はあるにしろ、有効性を保ち続けるとウイルス学で証明されていること。次に、2030年の子供たちは自然流行やワクチンによって免疫を獲得し、その子たちが大人になってもその免疫が部分的でも効果を発揮して重症化を防ぐということ。さらにウイルスの立場から考えると、ウイルスは自分が生きてゆくために宿主(人間)を失いたくはないので、宿主の適応能力に合った形に進化するということ。
そのような理由で、2030年にはインフルエンザと同じような扱いになっている可能性が高いと考えられます。この社会が疲弊してしまわない前に集団免疫を獲得した状況に入っていくには、とにかくワクチン接種を急がなければいけません。一方、このパンデミックで国や地域、人種や宗教による持てる者と持たざる者の格差が顕在化しているのもまた事実です。感染症を早く終息させる意義とは医学的な意味にとどまらず、もっと大きな意味での必要性を強く考えさせられます。