アメリカ人の成人1億人の3分の1が肥満です。しかもその3分の1が高度肥満で、歩くのが精いっぱいという人もよく見かけます。(そこまでになっても、山盛りのドーナツを朝から普通に食べていますが)。そんなアメリカですので肥満対策は国家あげての喫緊の課題です。
FDA(米食品医薬品局)は2021年、肥満治療薬「ウィゴビー」を承認しました。これはデンマークの製薬会社ノボノルディスク社の糖尿病治療薬セマグルチドの商品名で、要するに糖尿病薬を肥満薬に使うという手段です。
「ウィゴビー」の投与は月に一度皮下注射で行い、一本1600ドル(約20万円)前後で治療が行われています。ウィゴビー投与群は1年3か月にわたって着実に体重が落ち、平均して元の体重の15%低下しました。これはこれまでの薬が5%から10%だったことを考えると画期的と言われています。元々の体重が100キロを超えた人が多い中での臨床研究ですので、これにより血圧低下、血糖値、コレステロール値低下の効果が明らかになっています。ノボノルディスクは近々内服薬の承認も目指しています。
もちろん、この治療と並行して運動、食事療法を行うことでさらなる減量が期待できます。メリーランド州在住のある患者さんは「1年半で30㎏の減量に成功しました。ウィゴビーを打っているとすぐに満腹になるので自然と摂取カロリーを抑えられるのです」と述べています。「ウィゴビー」は食欲抑制ホルモンの合成薬です。肥満治療薬としては画期的ですが、甲状腺疾患を持つ人には使えず、下痢、嘔吐などの副作用も報告されており、安易に使えるものではありません。ダイエットは常にリバウンドと隣り合わせです。米国の深刻な高度肥満の現実に対し、この高額な医療が福音となり得るのか、まだまだ不確定な要素が多い気がします。