むずむず脚症候群(RLS:restless legs syndrome)は脚を動かしたいという強い欲求と脚の異常感覚のために不眠になる病気です。私たちが学生の頃には聞いたこともない疾患ですがそれもそのはず。この病気の診断基準が決定されたのは2004年。大変新しい病気の一つです。
有病率は?
欧米では7%~14%ですが日本では1%~4%と少なく、国内に200万人くらいの罹患者がいると推定されています。マスメディアで紹介されますので自分に当てはまると気づいて受診される方が時々おられます。下肢の不快感で30分以上入眠しにくく、夜中に3回以上目が覚めるような症状がある方はRLSの可能性も考慮しなくてはいけません。
診断基準は?
下の表が診断基準です。必須診断基準の4項目が当てはまれば診断確定です。むずむず感は午前中は目立たないのですが夕方や夜に悪化します。「ベッドに入ると脚を動かしていないと気持ち悪くてたまりません。むずむずして眠れません。」という訴えが見られるようになります。また同じ病気の人が家族にいるかどうかは診断を補助する情報ですので大切です。
RLSの診断基準
必須診断基準
- 脚を動かしたいという強い欲求が存在し、また通常その欲求が不快な下肢の異常感覚に伴って生じる。
- 静かに横になったり座ったりしている状態で出現、増悪する。
- 歩いたり下肢を伸ばすなどの運動にによって改善する。
- 日中より夕方・夜間に増強する。
診断を補助する特徴
- RLSの家族歴
- ドパミン作動薬への反応性が良好
- 睡眠ポリグラフ検査における周期性四肢運動の存在
原因と治療法は?
根本的な原因は実はまだわかっていません。けれども妊娠や鉄欠乏性貧血や腎機能障害で起こりやすいことがわかっていますので、外来では問診と一般採血をして腎機能や血液中の鉄分を検査します。非薬物療法としてはたばこ、カフェイン、アルコールを控える、下肢のマッサージや睡眠前の入浴などを指導します。RLSが週に2回以上起こるケースでは薬物療法を勧めます。現時点では「脳のドパミン神経系の異常」との考えが最有力ですのでドパミン神経を刺激する「ドパミン作働薬」やクロナゼパムというてんかんの薬を使います。経験的にはどちらも大変有効です。鉄欠乏性貧血のケースではドパミンの合成に必要な鉄分を補充します。
パーキンソン病との関連は?
パーキンソン病の方にRLSがよくみられることが知られています。この二つの病気とも脳内ドパミン神経系の異常ですのでパーキンソン病患者の12%と高率にRLSを合併するのです。そのため「RSLと診断されましたが将来パーキンソン病を発症しやすいのですか」という御質問を受けることがありますが、今のところそれに関する科学的データはありませんのでその点は心配する事はないでしょう。