新型コロナウイルスのパンデミックにより、この病気の種々の特徴が明らかになってきましたが、嗅覚や味覚の低下を訴える罹患者が増え注目されています。この問題に対し、日本耳鼻咽喉科学会が3月30日に声明を発表していますので簡潔にまとめて紹介いたします。
- 嗅覚障害、味覚障害は、インフルエンザや普通の「かぜ」でも起こることがあり、新型コロナウイルスだけの特徴とは断定できない。
- この症状は自然に治ることも多く、特効薬もない。治療を焦る必要はない。
- しかし、37.5度以上の発熱が4日間以上続き、咳や息苦しさ、全身倦怠感を伴っていれば、ただちに帰国者、接触者相談センターに連絡すること
- においや味の異常が急に起こった場合、それでだけでは診断できないが、万が一あとで新型コロナ感染症と診断された場合に周囲に感染を拡大させる可能性があるので、2週間は不要不急の外出を避けてほしい。
- 味覚、嗅覚障害の治療は急ぐ必要はない。2週間たっても他の症状がなく、味覚、嗅覚が改善しない場合は耳鼻咽喉科へ受診してほしい。
以上の声明、要望が発表されています。
現時点では、米国疾病対策センター(CDC)やWHOも嗅覚障害を新型コロナウイルスの症状リストに加えていません。また、英国ロンドン大学の研究では、PCR陽性患者の59%に嗅覚、味覚異常がみられたが、陰性患者の18%にもみられたということです。この差が有意なものかどうかは言及されていません。
いずれにしろ、私たちは新型コロナウイルスに対する強い恐怖感を持っていますので、一刻も早く診断したいという気持ちがあるのは当然です。SNSを通じて多くのフェイクニュースが送られてくるのもそのためでしょう。急に起こる嗅覚、味覚障害を無視することはできませんが、注意深く、落ち着いて、それ以外の症状の有無を観察することが大切です。