中高生のコンタクトスポーツでは頭部打撲による脳震盪が一番多く見られますが、相手の肘が顔に当たったり、顔面が地面に叩きつけられるような顔面外傷も時折見られます。先日受診した高校生の例を参考に注意すべき点を考えます。
17歳高校生のケース
ラグビーの試合中、スクラムで密集に巻きこまれて顔面を地面で強打。直ちに当院を受診しましたが意識は清明で、記憶にも問題はなく、脳震盪の所見ではありませんでした。左眼周囲を強く打撲して高度に腫れており、左眼が良く見えないと訴えていました。診察上は眼球運動障害や視野の異常はみられませんでした。圧痛点は一番腫れている左の眼の内側と下にあり、診察中に腫れがどんどん増してくる状態でした。CT検査で脳と副鼻腔を詳しく観察したところ、脳内には異常はありませんでしたが、左の上顎骨に骨折があり、骨が内側に折れこんでいる状態でした。近くの基幹病院の耳鼻科と眼科を紹介し、さらに詳しい検査を行ってもらうことにしました。
顔面外傷のチェック方法
1.意識レベルと記憶のチェック
呼びかけにきちんと答える事ができるか、ケガをした時の状況を覚えているか、激しい頭痛がないか確かめる。問題がなければ緊急性はないが、きちんと答えられないようなら、脳震盪の可能性が高いのですぐに専門の病院へ搬送する。
2.神経症状を簡単にチェック
眼の前で指を動かしてみて、自分の意志で開眼できるか、動く指が見えているか、指を追う事ができるか、二重に見えていないかをチェック。両腕を挙上させて、手のひらをグーパーさせて、左右差なく動かせるかチェック。
3.顔面の腫れをチェック
眼の周りや鼻や頬が腫れていないかチェック。 鼻骨や頬骨骨折があると痛みが非常に強く、急激に腫れてくる。顔の骨折は緊急性はないが、疑わしい場合は必ず専門の科を受診させる。
4.その他の注意点
- 打撲、出血部位はすぐに圧迫して氷で冷やして様子をみます。
- 顔面打撲でも頭部打撲と同じ力が脳に働きますので、打撲が強い場合は硬膜下血腫、硬膜外血腫などが起こる可能性があります。CT検査は必ず必要です。
- 眼球の周囲は皮膚が薄く脂肪組織が多いので腫脹がひどくなりやすいのです。コンタクトレンズは早めにはずしておかないと、腫れがひどくなるとはずしにくくなります。
- ボールが眼を直撃したケースでは眼窩の底の薄い骨が折れて、眼を動かす筋肉が障害されるため、物が二つに見えるようになります。これを吹き抜け骨折といい、手術が必要になります。
- 眼球を強く打つと眼球震盪が起こり、しばらく視力が低下したような状態になります。これは徐々に回復してきますが、眼科医に診てもらうのがいいでしょう。
- 顔面の変形が起こっているような外傷では、鼻骨骨折、眼窩底骨折、頬骨骨折、頬骨弓骨折、下顎骨折などが疑われますので、直ちに病院へ搬送してください。