肩こりのある方が頭痛を訴えて一般の病院を受診しますと「肩こりからくる頭痛」と診断されて筋肉をやわらげる薬、筋肉の血行を良くする薬、ビタミン剤などを処方されることがあります。これは「緊張型頭痛」と診断された方に行なわれる一般的な処方です。
その処方で頭痛が軽減する場合はいいのですが、効果が思わしくなく頭痛外来を訪れる方も多く、そういう場合にはもう一度詳しくお話しを伺うことになります。
肩こりは片頭痛?
私たち頭痛外来を行っている医師たちが、肩こりと頭痛を訴える患者さんを診察しますとまず最初に疑うのが「片頭痛」です。緊張型頭痛のケースも確かにあるのですが、わざわざお仕事を休んでまで頭痛で病院にかかるというのは「頭痛がかなりひどいから」に他なりません。緊張型頭痛ではそこまで激しい頭痛に苦しめられることは少ないからです。そして、肩こりが片頭痛を診断する上で大変役立つ大切な症状だと専門の医師たちはよく知っているからです。
片頭痛の肩こりの特徴は?
肩こりは多くの人が持っている症状ですので、肩こりだけで頭痛を区別することはもちろんできません。ただ、片頭痛に関連して発生する肩こりは慢性の肩こりと少し性質が違います。患者さんがよく訴えるのは、「頭痛の前に肩こりが急に悪化してくる」、「首や肩がぐっと張ってくる感じがする」「後ろ頭の方にも凝りが拡がってくる」という現象です。この特徴的な肩こりに、拍動痛や嘔吐、光過敏や音過敏など片頭痛らしい症状が付随すると診断はかなり固まってきます。
そもそもなぜ片頭痛に肩こりが?
脳は硬膜という膜に覆われていて、その硬膜の上を走っている三叉神経という神経から色々な痛みの物質が分泌されて片頭痛は起こります。この物質が炎症を起こしたり血管を拡張させてどんどん痛みが悪化していくのです。この三叉神経は硬膜だけに分布しているのではありません。この神経は首や肩の筋肉にも分布しているのでそこにも炎症が波及する事があり、その結果片頭痛の前に独特な「肩こり感」が出現することになるのです。
トリプタン製剤内服のタイミングは?
片頭痛の特効薬トリプタン製剤ですが、その効果は飲むタイミングでかなり変わってきます。片頭痛の前触れとして肩こりがある方は非常に多く、その症状を覚えておけば内服のタイミングを逃すことはありません。不快な肩こりがぐっと肩や首に拡がって来た時、それは空が急に雨雲に覆われてぽつりぽつりと雨が落ち始めたそんな時です。雨脚がにわかに強まり人々が恨めしそうに空を見上げ小走りに街を駆け始めたそんな時、それはまさに片頭痛の始まりです。タイミングを逃さないようすぐにトリプタンを服用しましょう。