新型コロナパンデミックが1年以上経過し、この病気の特徴が徐々に明らかになってきました。2021年春の時点でどのような知見が明らかになっているのか、統計で分かったことを箇条書きにしてまとめてみます。
臨床症状
- 新型コロナウイルス感染症の潜伏期間(感染してから発症まで)は14日以内で、多くは5日以内である。
- 症状は発熱、咳、咽頭痛、倦怠感でインフルエンザに似ている。
しかし、鼻汁、鼻閉の頻度は低い。 - 下痢13%、吐き気、嘔吐10%、腹痛9%と1割前後に消化器症状も出る。
- インフルエンザや普通の風邪に比べて嗅覚障害(53%)や味覚障害(44%)が高頻度である。
- 発症から1週間程度軽症で経過したあと、10日後あたりから急激に悪化しICUに入院するケースがある。この臨床経過はインフルエンザにはなく、新型コロナに特徴的である。
- 日本の全国統計では軽症が62%、酸素投与を要する中等症が30%、重症が9%であった。入院患者の年齢中央値は56歳で、決して高齢者ではない。
重症化のリスク
- 重症化しやすいのは、高齢者(70歳以上)と基礎疾患を持っている人たちである。
- 重症化しやすい基礎疾患は、心臓病、慢性肺疾患(喫煙者)、脳血管障害、腎機能障害、肝疾患、がん、肥満、脂質異常、高血圧症、糖尿病である。
罹患した患者の致死率
- 日本国内での全年齢の致死率は1.8%である。
- 20代、30代の重症化は極めて少なく、40代の致死率は0.1%以下である。
- 50代は0.5 %、60代は2.3%である。
- 高齢者の致死率は70代が7.2%、80代以上は17.5%と非常に高率であった。
亜急性期から慢性期に続く症状
- 日本での統計では発症60日後の後遺症は、嗅覚障害19.4%、呼吸困難17.5%、倦怠感15.9%、咳6.3%、味覚障害4.8%であった。
- イタリアの統計では、治癒2か月後、87%に症状が残っており、倦怠感、呼吸困難、関節痛、咳、味覚障害などが多く見られた。
- フランスの統計では倦怠感、呼吸困難が多かったが、中には脱毛、記憶障害、睡眠障害、集中力低下なども見られた。
- これらの後遺症はインフルエンザでは少なく、新型コロナウイルスに特徴的と言える。
新型コロナウイルスの胸部画像所見
- 胸部X線写真では両側肺野に広がるすりガラス様陰影が特徴である。
- しかし胸部X線検査では軽症例は見逃されることがある。
- 胸部CTでは86%で発見可能であり、診断にはCT検査が重要である。
- 新型コロナの特徴は、発熱も呼吸器症状もない無症候者でもCT上肺炎所見がみられる事である。
新型コロナの薬物療法
- 2021年1月現在、軽症患者に強く推奨される有効な薬物はない。
- 使用できる抗ウイルス剤もない。
- 酸素が必要な中等度から重症患者では、エボラウイルス薬であるレムデシベル、SARSで用いられたファビピラビル、ステロイド剤が用いられている。
- ステロイドの有効性は確立された。酸素投与を必要とする患者群の致死率を低下させることが明確になったため、標準治療に位置付けられている。
ワクチンの有用性
- 国立感染症研究所はファイザー製ワクチンの有用性の途中経過を発表した。
- 2021年2月27日~4月11日に「少なくとも」1回の接種を行った医療従事者(1回終了110万1698人、2回終了104万2998例)を解析した結果、新型コロナワクチン陽性率は0.026%であり、有効な抑制効果が示された。副反応を含めた詳細な検討は現在研究段階にある。