一過性脳虚血発作とは、「脳の細い血管が一時的に詰まって色々な症状を来たすけれども、しばらくすると症状が消えて元に戻ってしまう」という病気です。元には戻るのですが、この病気は脳梗塞の前触れと考えられていますので、早急に検査や治療が必要です。
脳の中のどの血管が閉塞するかによって症状は異なります。
- 「一時的に言葉が出なくなりましたが、数時間で話せるようになりました。」
- 「食事中、突然右手に力が入らなくなり箸を取り落としてしまいましたが、数十分で力が入るようになりました。」
- 「仕事中に左半身全体が急にしびれてきましたが、しばらく休んでいるとほとんど感じなくなりました」
- 「片方の目が急に真っ暗になって見えなくなりましたが、数分で戻りました」
などの症状ですが,これらは長くとも24時間以内、ほとんどは数時間から数分以内に回復します。
原因は、高血圧、高脂血症、糖尿病、肥満、喫煙などによって、脳に血液を運ぶ重要な血管に動脈硬化が進行していることです。その結果、血管が狭くなり血流が悪くなったり、血管に付着した血栓の一部がはがれて脳の細い血管まで流れて行き、閉塞するためと考えられています。その血栓がたまたま数時間以内に融解すると、血流が再開し症状が消えてしまうのです。心房細動などの不整脈がある場合も心臓内の血栓が脳に飛んで同じような症状を来たしやすくなります。
このように、一過性脳虚血発作は生活習慣病や心臓病やメタボリック症候群などが原因となっておこる疾患で、本物の脳梗塞の前触れと考えられています。全身の検査を行い、生活習慣を見直し、半身不随や失語症を引き起こす重症の脳梗塞にならないよう早急な対策をとる必要があります。
治療には、生活習慣病の治療と共に、血液を固まりにくくする「抗血小板剤」「抗凝固剤」「脳血流改善剤」などを病状に応じて使い分けることになります。