頭痛外来には、片頭痛発作時に吐き気や光過敏などの通常の随伴症状だけでなく、激しいめまいを伴って受診する方がおられます。逆に耳鼻科のめまい外来にはめまい発作につらい頭痛を合併して来られる方がいます。このようなケースでは「前庭性片頭痛」という病気を考慮する必要があります。以前は「片頭痛関連性めまい」といっていたのですが2013年の国際頭痛分類で改変されました。
「前庭性片頭痛」の国際診断基準をわかりやすくまとめますと次の様になります
- 過去に片頭痛の診断を確実に受けている事(片頭痛の診断基準を満たしている事が必要です)
- 5分~72時間の間で持続するつらいめまい発作が起こること
- 2のめまい発作の少なくとも半分には、下の様な片頭痛の特徴をもつ頭痛を合併すること。片側性、拍動性(ズッキンズッキンする)の強い頭痛、光や音に過敏になる、日常動作で悪化する、視野にキラキラするものが見える前兆(閃輝暗点)が起こる。(以上のうち2項目当てはまればよい)
めまいは回転性の場合もあれば、ふらつきのようなめまいもあります。めまい発作を時々繰り返して受診している方に、以前片頭痛と診断されたことがなかったかを尋ねると、問診だけでも診断がつくことがあります。もちろん、頭痛外来で専門医の診断を受けている事が前提です。耳鼻科の領域ではまだあまり認知度が高くありませんので、これから徐々に知られていく病気かと思われます。
頭痛外来では前庭性片頭痛はあくまで片頭痛の一種として考えていますので、片頭痛で適応を取っているカルシウム拮抗薬、抗てんかん薬、抗うつ薬などを用いて治療を行っています。2週間くらいの投与で効果が出てくるケースが多いようです。また、片頭痛を起こさないための生活上の管理が大切で、睡眠不足やストレスに注意し、人ごみやまぶしい光を避けるなど視覚刺激に対する工夫も大切です。
前庭性片頭痛の有効な治療法に関してはまだまだ症例が蓄積されているとはいえません。メニエール病との区別が難しい事もあってスタンダードな治療が確立していないのが現状です。現時点では頭痛外来で発見されるか耳鼻科で発見されるかで治療方針が変わることもありますので、これからさらに双方の症例に検討が加えられてスタンダードな治療方針が定まっていくことになるでしょう。